皆様、お久しぶりです。『グラーキの黙示』シリーズの翻訳企画の発起人であるライター・翻訳者の森瀬繚乱です。
10月末より、新たなクラファン企画を立ち上げました。皆様のご協力を賜ればと思いまして、ご報告させていただきます。
今回、日本語訳を出したい小説は、リチャード・アダムズの『ウォーターシップ・ダウンのものがたり Tales from Tales from Watership Down』です。
【翻訳出版クラファン実施中】
名作『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』の後日譚
1996年発行未翻訳作品『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』を翻訳出版したい!
こちら、翻訳小説読みであれば、タイトルに聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。1972年に刊行され、日本でも評論社さんから邦訳が刊行されております動物ファンタジー、『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』の後日談なのです。
前作については、世界各国で今なお刊行され続けているベストセラーであり、1978年のアニメ映画版が日本でも公開されたり(つい先日、HDリマスター版が劇場公開されました)、2018年にはNetflix/BBC制作のCGアニメ版が配信されるなど、繰り返し映像化されてきました。ご存知ない方が多いとは思いますが、1999年にもアニメ版が制作され、3シーズン39話にわたりTVで放送されています。
にもかかわらず、正式な続編にあたる『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』については、現在までに邦訳がないだけでなく、よほど熱心なファンでない限り、知っている人間も少ない状態が続いていました。
こうしたこと自体は、それほど珍しくありません。エドガー・ライス・バローズの『ターザン』然り、ジョンストン・マッカレーの『快傑ゾロ』然り、フランク・ライマン・ボームの『オズの魔法使い』然り、1作目ばかりが有名で、時にはシリーズであること自体が見落とされていることは、海外の娯楽小説にはまあ、ありがちなことです。
幸い、『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』については続編も1冊きりであり、前作も今なお刊行が続いているので、敷居もそれほど高くありません。
日本の愛読者の中には、前作同様に神宮輝夫氏の翻訳で、同じ評論社から刊行されてほしいとお考えになる方も、少なくないことでしょう。残念ながら、神宮先生は2021年に亡くなられているのです。そのこともあるからでしょうか。評論社さんの方でも、今後、続編の邦訳を刊行するつもりがないという意向でいらっしゃることを、本企画を発起するにあたって、筆者の方から繰り返し確認しています。
わざわざ明言するまでもないことかもしれませんが、『ウォーターシップ・ダウンのものがたりは』は、クトゥルー神話要素がない動物ファンタジーです。その意味で、『グラーキの黙示』シリーズをご支援いただいた皆様にとっては、カテゴリ違いかもしれません。とはいうものの、同じ空、同じ大地の物語であり、どこかしら共通する空気を感じられるかもしれません。さらに言えば、『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』は、ラムジー・キャンベルと同じくラヴクラフトの信奉者であり、彼の神話大系の影響を色濃く受けているスティーヴン・キングが、『指輪物語』とともに自身の長編群への影響源としてしばしばタイトルを挙げる作品でもあるのです。
今回も、ご支援いただけると嬉しいので、なにとぞご検討いただけますよう──
森瀬繚