自分を「異物」と感じていたリリー。マレーシアから帰国後、学校をやめ、モデルの仕事を始める。ジミーとは会わなくなり、それでも、日々は静かに過ぎていった。あの日が来るまでは――。
「暴力とはなにか? 」
「生きることの痛みを、どうしたらいい? 」
一度読んだら、もどれない物語が、幕を開ける。
(順不同)
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読み終えた後、茫然としてしばらく言葉が出なかった。
心の中にある【開かずの扉】を不意にノックしてしまったような、不安やドキドキ感とワクワクが入り混じった複雑な気持ちになり
「これは・・・とんでもないものを読んでしまった」と思った。
一行ごとにエイミーさんの「ド・本気」が痛いほどに伝わり、密度の濃い直球エネルギーがハートにドーンと投げつけられる。
読み手であるこちらも本気にならざるを得ない。
様々な登場人物は、自分の中の多様性の一部を投影しているように感じ、心を揺さぶられ正直かなりヘビーだった。
そんな中でも、ジミーが登場する場面では深呼吸ができた。この世界の中にジミーがいてくれてよかった。
愛に包まれてこそ、変容は起きるのだと感じた。
物語の根底にある世界観が大きいほど、その物語は読み手によって色を変え、読者の数に応じて多様な見方が生まれるものだと思う。
この小説は間違いなくその類だと感じる。
花咲 ともみ(Hanasaki Tomomi)さん
・心理セラピスト
・メンタルトレーナー
・企業研修講師
女性下着メーカーの会社員を7年間、フリーアナウンサーを14年間経験したのち、2003年独立起業し、メンタル系のセミナーやセッションを行うほか、企業研修講師としても活動している。
著書
・『今日からできる!アーユルヴェーダのかんたんストレス解消術 』ごきげんビジネス出版
・『楽しいから続けられる!あなたにも出来るメンタルトレーニング』ごきげんビジネス出版
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みなさんは、自分に他の大勢とは違う「印」が付いていると感じたことがあるでしょうか。
僕にはあります。
アメリカに住んでいたときは、東洋人として、この本の主人公と同じように外見で決めつけられたことが度々ありました。ただそれは、災いばかりではなかったように思います。
マイノリティーとして生きる経験を通して、この本の中のふたりほどではないにせよ、僕も他者に対して優しい人になれたような気もするのです。
でも、この物語は「優しさ」だけに留まらない「凄まじさ」をも備えています。
それは心の自由を奪う暴力から魂を解き放つ解放の物語であるし、自分を退治しに来る『桃太郎』を鬼の視点から見て初めて描けた物語なのでしょう。
斉藤賢爾さん
1993年、コーネル大学より工学修士号(コンピューターサイエンス)を取得。2006年、慶應義塾大学よりデジタル通貨の研究で博士号(政策・メディア)を取得。インターネットと社会の諸問題の研究に従事し、2019年より早稲田大学大学院経営管理研究科教授。こどもたち自身による未来創りを応援する一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。
主な著書に「不思議の国のNEO」(太郎次郎社エディタス) など。
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日本社会のリアルを目の当たりにしているようでした。
リリーの苦しみや痛みには、多くの女性が共感すると思います。
心を揺さぶられ、抉られながらも、リリーの強さに勇気をもらい、まるでセラピーのように感じました。
ぜひ、今を生きる20代の女性に手に取ってほしい一冊です。
ひがしりこさん
femUniti株式会社でコミュニティマネージャーとして勤務。
未踏的女子発掘プロジェクト2期生
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女性蔑視は普段は隠れていますが、現在なお強烈に存在しています。けれどこの世界が戦争を避け、 対話と協調をベースにした 次のタームに移って行くことを望むなら 女性が生み育てる性としての自分に誇りを持ち、自分自身の尊厳を守るために立ち上がることを避けてはいられない。
なぜならマイノリティの中で最大派閥である女性が、自らを誇れず、意思を表明することができないならば、 社会の多様性なんて、絶対成り立っていかないからです。
しかしこれは、女性だけの問題なのだろうか?私は労働問題に関する日々の活動の中で、尊厳を奪われ命を落としていくたくさんの男性達に出会ってきました。
普通に暮らしていても、災害で大切なものの全てを失うこともあるでしょう。 そんな状況に陥った時、 私たちはどうしたら再び「生きる」 ことができるようになるだろう。
そこには過去の自分を一度殺し、生まれ直すくらいのことが必要かもしれない。
「夜をめくる星」の後半を泣きながら読むという贅沢な時間の中で 彼女のようでありたかった かつての自分が、小説の中で大切に掬い取られ、昇華されていくのを感じました。
この本に巡り合うことは、物語と共に生きること。そうい稀有な体験を捕まえることです。
いつか私の周りにいる,たくさんの性的虐待、レイプを受け苦しんでいる友人たちが、 この本を読むことができる日が来ることを、心から望むと共に、 すべての女性、全ての男性に、 この本が届くことを 心から望んで止みません。
前川珠子
未来世代法日本版チーム 特定非営利法人グラスルーツ理事 東日本大震災復興の過程の過労死で家族を失い、過労死等防止対策推進法の制定に尽力、前過労死等防止対策協議会委員。現在はスピリチュアル・アート・音楽活動の傍ら、Well-beingの観点から、働き方の問題に携わる。著書「私が死んだ後で」
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困難についての物語というのは、いかに傷んでいるか苦しんでいるかばかりが取り沙汰されたり、傷つけた他者との戦いや復讐の話に注目されるものがあります。
自分の内側の傷を、その出来事が終えたあとも続いていく人生の中でいかに自ら乗り越えるか。それには、もがき、試し、失敗したりしながら、自分だけの物語を紡いでいくことでしか成し得ないのではないか。そんなふうに思うのです。
ここに書かれているのは、憐憫を誘う被害者ではなく、灰の中から蘇る不死鳥のように、傷を飲み込み変容を遂げる一人の少女の物語です。
誰もが内側に、自分を生きる力を宿している。
その事実に、希望と力を得る人がきっといる。
私のように。
吉川ヒロさん
幼少期から違和感を感じ、20歳からトランスジェンダー男性として生き始める。性的マイノリティ当事者として2012年頃から多様な性に関する啓発や相談に携わり、2024年時点で講演数250回以上、年間80回以上登壇。 人が自分らしく生きるパワーを表現するべく、執筆や独演会など表現活動も行う。 著作『Speak Out vol.1』。 https://hirospeakout.base.shop/ hirospeakout.base.shop
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もはや小説ではない。途中で何度も立ち止まり、読み進められなくなることも。
私は果たしてどうやってここまで生きてきたのだろう?私も直面してきた衝撃や痛み、怒りは、どこに置いてきたのだろう?
読み終えることができてよかったと思う。
女性たちが真に地面を蹴り出し、「私」を生きていくためにも、『夜をめくる星』をきっかけに仲間と共に語り合うことを提案したい。
痛みは亡霊のようによみがえる。
だから語りたい、何度でも何度でも。
鈴木世津さん
一般社団法人SD&I研究所 共同創設者 兼 代表理事
femUniti株式会社 共同創業者兼CEO
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自分は日本人の男子として生まれ、何かしらのジェンダーに関する不条理を自分事として体験したことがありません。
もしかしたらすぐ近くでそのような行為が行われていたかもしれませんが、少なくとも僕は気付くことはなかったし、さらに少なくとも自分は加害者になったことはないと信じて生きてきました。
そういった事実が特定の業界に存在するという噂を聞いても、どこかでリアリティを持って捉えないことで、ピントをぼかして、現実のこととして捉えないようにしてきたと思います。
しかし、この小説で、当事者の心理描写の圧倒的なリアリティ、そして後半の展開を追うに連れ、それは決して噂などではなく、現実社会で起きているリアルであり、当事者は「単に傷ついた」などという言葉では表せない何かを、心の奥深くにこびりつかせているんだというリアルを突き付けられました。と同時に「男」達と自分が同じ性であることへの恥じらい、自分は決してこんな「男」達とは一緒ではないという嫌悪感が沸き立ってきました。
そんな僕の救いはジミーの存在でした。
彼のあり方、眼差し、行動。 今の自分ならわずかに共感できる感情をジミーが代弁してくれたことで「少なくとも加害者にはなったことはない」という傍観者的な立ち位置から一歩進んで「戦う人を抱きしめられる存在でいたい」という立ち位置に自分は変化しているんだという事をとても優しく感じさせてくれました。
細野真悟さん
グッドビジネスクリエーター You be You 株式会社 取締役 一般社団法人Fukusen 代表理事
リクルートで人材領域での企画開発や新規事業開発を経て、リクルートキャリア執行役員に。現在は「全ての人が本来の自分を生きる」を理念とするYou be You、「全ての人にスモールグッドビジネスを」を理念とするFukusenの代表理事として「生きる」と「働く」をつなぐ活動を展開。
著書に『リーンマネジメントの教科書』(日経BP)。
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私の人生には起こりえない物語だろうと思って読み始めました。主人公リリーと私には何ひとつ共通点がないから。
でも読み始めてすぐに、これまでの人生で私が傷つきながら受け入れざるを得なかったジェンダーに関する不条理が呼び覚まされて、リリーに重なりました。
ジェンダーに関する不条理は今も私たちの周りにあります。怒りに変えて戦う人もいるけれど、戦ってより傷つくなら、むしろ問題にしないフリをしたほうが正気を保って生きやすい。リリーや私のように。
でもそれでは体の中に毒が溜まっていくようで辛い。
そういう人のために、この物語のラストには希望も用意されています。
大坂祐希枝さん
有料放送のWOWOWで顧客数が4年連続で減少した際にマーケティング部門の責任者となり、以降V字回復を実現してグループ初の女性取締役に。
現在はメンター、コーチとして若手経営者予備軍の育成などに携わる。
著書に「優良顧客を逃さない方法」。
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日本では、「植民地化」という言葉に触れる機会が少ない。なんだか漂白されているかのような不自然さを感じる。しかし、世界は、そこら中に植民地化の傷跡が生々しく残っている。
えげつない支配と被支配の構造で埋め尽くされた時代をどのように総括するのか、それを踏まえてポスト植民地時代をどのようにして生きていくのかということを、意識せざるを得ない。
植民地化とは、社会システムの暴力だ。抑圧者の価値観は、いつのまにか心に侵入し、自分の中に埋め込まれたそれが、自分自身を抑圧する。抑圧者は、相手を他者化して貶め、自分自身を正当化する。
社会システムの中でゆっくり殺されていく側の言葉は、抑圧者の正当化の語りに回収されていく。これは、国家間だけでなく、あらゆる権力関係の中で起こる。
「この構造をどこから破っていけるのか?」
「社会システムの中の抑圧者と被抑圧者の入れ子構造の中で、どうやって非暴力へ向かっていけるのだろうか?」
それが、ポスト植民地時代を生きる、この惑星の私たちの重要テーマであり一人ひとりが、それぞれのやり方で未来を切り開いていくのだと思う。
このような深いテーマに、小説だからこそできるアプローチをするものが、これだ。
「夜をめくる星」が、世界に放たれる。
田原真人
参加型社会へのパラダイムシフトを目指す社会変革デジタルファシリテーター。
生成AI時代入り、主体と環境との絡まり合いを再構成し、参加型社会デザインを提案する。
国際ファシリテーション協会アジア支部理事、参加型社会学会理事
(株)デジタルファシリテーション研究所 代表
著書『出現する参加型社会』他
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私には、ずっと書かなければならないと思っていたことがあります。そうしなければ、その想いは、私を内側から食い破り続けるだろうと。
『ジミー』では、高校生の主人公マイは、インスタグラムのフォロワーが70万人もいるリリーを「自分とは違う人だ」と思っています。しかし、私には、リリーとマイが背中合わせにたっているように思えました。彼女たちは、どこを向いて、何と戦っているのでしょう。
『ジミー』を書き終えたころから、私には、リリーの姿が見えるようになりました。それは、痛みと悲しみ、強烈な怒りを抱えた恐ろしい存在でした。
リリーとマイが、裏と表ならば、それは私の裏表だったのでしょう。
リリーは、血まみれでぼろぼろの姿になりながら、必死に戦っていました。それは、内側の何かが、形を変えた姿だったのかもしれません。
「暴力とはなにか」
「力を奪われた人は、どうやってそれを取り戻すのか」
「どうしたら、人はそれでも生き抜けるのか」
リリーの亡霊に取り付かれ、絞り出すように私は書き続けました。
ラストシーンまで来た日。
どこからか、まったく予想もしていないようなことばが聞こえてきました。私はそれを文字にして打ち込みました。
終、と書き終え、私は茫然としていました。これは、なんだったのでしょう。私一人ではたどり着かなかった場所に、私はいるようでした。
ああ、そうか。
闇と思っていた私の恐れ、苦しみ、怒り、痛みが、突然、光を放つものに変わっていたのです。その輝きの中に、私はひとり立ちました。
すべてがひっくりかえったのです。
過去が流れて影響を及ぼしたのではなく、いま生まれた物語が、大きなうねりとなり、その波がすべてをひっくり返す。
今までの人生のすべての恐ろしいものが、このためにあった。
私は、恐ろしい出来事に支配されたのではなく、それを食い、いま、殺し返した。
亡霊のリリーは、その役目を終えました。彼女は、私の中から抜け出て物語のなかに命を持ちました。
これは「殺さなければ自分が死ぬ」と限界に歩いていく人の話です。恐ろしくおぞましい話です。
私が書いたのではなく、おそらく鬼が、私を連れて行ったのでしょう。あなたの中に鬼がいれば、目を覚ますかもしれません。
内側から食い破られることを拒否しろ、生きろ。
それは私に言いました。
鬼となっても、生きろと。
ーこれは、鬼の話です。
2025年3月14日 青海エイミー
大学院でジェンダースタディーズを学ぶ。2011年マレーシアに移住。ペナン島で初めての小説『ジミー』を執筆。原稿を読んだ橘川幸夫氏、メタ・ブレーン代表の太田順子氏に絶賛され、出版が決まる。200人が原稿を読み、クラウドファンディングで多くの支援を得てのち、2022年5月『ジミー』発売。2023年『本当の私を、探してた。』発売。『夜をめくる星』は三冊目。
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『イコール』(橘川幸夫責任編集)副編集長+AD。AR三兄弟の三男。おぽぽ。
https://www.youtube.com/watch?v=c7_fAXzDv7o